常備薬(じょうびやく)2026.04.268

「時間がない」は事実だ。それでも55歳から日本地図を作った男が教える、社会人の時間の作り方

やりたいことが後回しになり続ける社会人へ。伊能忠敬の「時間を先に確保する」哲学から、タスクマネジメントの本質を学ぶ。

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「いつかやる」は、本当にいつ来るのでしょうか

仕事が終わるころには頭も体も空っぽで、「今日もできなかった」とため息をついて寝る——そんな夜が、もう何週間続いているでしょうか。

やりたいことはある。むしろ増える一方です。でも時間だけが、誰にも平等に足りない。

「意志が弱いから続かないのか」「自分の管理能力がないだけか」と自分を責める前に、少し待ってください。あなたは時間の使い方が下手なのではなく、タスクマネジメントを「仕事」にしか使っていないだけかもしれません。

症状のメカニズム原因の客観視

なぜ「時間がない」は永遠に解決しないのか

「タスクマネジメント」という言葉を聞いたことがある方は多いと思います。仕事の優先順位をつけ、効率よくこなす技術——そう理解している方がほとんどではないでしょうか。

ですが、「やりたいことが後回しになる」という問題において必要なのは、「仕事を速くこなす技術」ではなく、「自分の時間を先に確保する技術」です。

多くの人は「残業が終わったら」「週末になったら」「連休が来たら」と、仕事の残り時間にやりたいことを当てはめようとします。ところが現代の仕事は、基本的に残り物を出しません。求められれば際限なく広がり、空白を見つけては埋めてきます。

「仕事のタスクマネジメント」に長けている人ほど、逆説的に仕事に時間を使いすぎてしまうのはこのためです。仕事を効率化すればするほど、次の仕事が入ってくる。

解決策は、仕事をもっと速くすることではありません。「自分のやりたいこと」をタスクとして、仕事より先にカレンダーに入れる——この順番を変えることです。

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55歳で夢を叶えた男の「時間の使い方の哲学」

江戸時代後期、日本で初めて精密な全国地図を作成した伊能忠敬(1745〜1818年)。現代人が彼に抱くイメージは「55歳を過ぎてから夢を叶えたロマンの人」ですが、これは半分しか正しくありません。本当に注目すべきは、夢を叶えた「後半生」ではなく、それを可能にした「前半生の時間の哲学」です。

忠敬は17歳で下総国佐原村(現・千葉県香取市)の商家・伊能家に婿養子として入り、傾きかけた経営を立て直します。酒造・醤油醸造・貸金業・水運業という複数の事業を再建しながら、薪炭の新規事業を開拓し、米の売買を関西まで拡大。村の名主(なぬし)としての行政仕事も引き受けながら、49歳で家督を息子に譲るまでの約30年間で、現代の価値に換算すると30億円以上ともいわれる資産を築きました。(参照:InopPedia「伊能忠敬はどんな人か」https://www.inopedia.tokyo/pupil/hand_01.html)

これだけ聞くと、「忙しすぎてとても趣味の時間などなかったはず」と思うかもしれません。ところが、49歳で隠居し50歳で江戸へ出た忠敬の姿が、すべてを物語っています。

江戸で天文学者・高橋至時に弟子入りした忠敬は、天体観測と計算(「推歩」)に没頭します。そして彼は観測を「時間を決めて行う」というルールを徹底しました。時間になれば観測を始め、外出や会食の誘いも断る。その徹底ぶりに、師匠の高橋至時は忠敬に「推歩先生」というあだ名をつけたと伝えられています。(参照:InopPedia「伊能忠敬はどんな人か」https://www.inopedia.tokyo/pupil/hand_01.html)

「自分のやりたいことの時間を、先に・固定して・死守する」——これが忠敬のスタイルでした。

(以下は筆者による解釈です)商人時代の忠敬を支えたのは、几帳面な記録の習慣でした。後の測量日記(千葉県香取市・伊能忠敬記念館所蔵、国宝指定)に見られる精緻な記録の精度は、30年の商人生活で培われたものです。記録するということは、「自分の時間を可視化する」ということ。何に時間を使っているかが見えるから、何を削れるかもわかる。忠敬は「空き時間ができたら天文学をやろう」と待っていたのではなく、「天文学の時間を先に確保し、残りで仕事をこなす」という哲学を持っていたのではないでしょうか。(解釈ここまで)

用法・用量明日からの具体アクション

明日から使える「忠敬式・3ブロック週間確保術」

1週間を3つのブロックに色分けします。紙の手帳でも、Googleカレンダーでも構いません。「本業ブロック(赤)」は仕事・会議・対応が発生する時間帯、「生活ブロック(青)」は食事・移動・家事・睡眠、「自分ブロック(緑)」はやりたいことだけのための時間です。

【用法①】ほとんどの人は赤→青を埋めてから「残りが緑」と考えます。これを逆にするのが最初のステップです。週の初め(日曜夜か月曜朝)に、まず緑のブロックを手帳に書き込む。30分でいい、週に2〜3コマでいい。忠敬が「観測の時間を先に決めて、外出も断った」のと同じ発想で、「緑の時間は死守する」と先に宣言することで、赤が侵食しにくくなります。

【用法②】「30分じゃ何もできない」「1時間は確保しないと意味がない」——心当たりはないでしょうか。これが「まとまった時間神話」です。やりたいことを始めるために「理想の条件」が揃うのを待ち続ける状態で、症状のメカニズムで説明した「空き時間待ち思考」の発展版です。現代のサラリーマン生活においてまとまった空き時間はほぼ生まれないため、この思い込みを持ったままでは緑ブロックを確保しても「30分しかないからどうせ無理」と自分で消してしまいます。忠敬の測量日記を読むと、移動中の観察、宿での計算、早朝の星の記録など、驚くほど細切れの作業が積み重なっています。「15分あれば前進できる」という前提で動くこと——それが忠敬から学べる時間術の核心です。(測量日記一覧:https://www.inopedia.tokyo/database/diary/)

  • やりたいことが「勉強」なら1ページだけ読む。「副業」なら1行だけ書く。「運動」なら5分だけ動く。完璧な1時間より、不完全な15分を週4回積み重ねる。
  • 最初の1週間は週2コマ(各30分)から始める。いきなり毎日やろうとすると、崩れたときの自己嫌悪が習慣を潰す。
  • 赤ブロックが緑に侵食してきたら、翌週に「振替」する。忠敬も天候や体調で測量を休む日があったが、必ずリカバリーしている。完走より継続。
  • 緑ブロックに「SNS閲覧」「動画視聴」は入れない。それは「休息」なので青ブロックへ。緑はあくまで「やりたいこと」専用の枠。
#伊能忠敬#時間管理#タスクマネジメント#江戸時代#時間術